骨病変とつき合いながら日常生活を送るために

多発性骨髄腫の発見

Q2.
整形外科では、どうやって多発性骨髄腫を見つけるのでしょうか?
A2.
レントゲン検査や血液・尿検査などを行うと、加齢に伴う通常の骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などと見分けることができます

多発性骨髄腫は高齢者に発症することが多い病気です。骨のレントゲン写真では、同じく高齢者に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とほとんど見分けがつかないことから、通常の骨粗鬆症を“原発性骨粗鬆症”、多発性骨髄腫などによるものを“二次性骨粗鬆症”と位置づけるようになってきました。したがって、骨粗鬆症と多発性骨髄腫の患者さんを見分けることは非常に重要です。

骨のレントゲン写真

骨のレントゲン写真では、通常の骨粗鬆症も多発性骨髄腫も骨透亮像(こつとうりょうぞう)という、骨が薄くなっている部分が見られます。ほぼ同じような像に見えるのですが、よく見ると、通常の骨粗鬆症の場合は骨が一様に薄くなっているのに対し、多発性骨髄腫では薄いところとそうでないところがあるように見えるのが1つの特徴と言えます。また、頭蓋骨の一部が薄くなり、レントゲン写真で穴があいたように見える“パンチドアウト”(打ち抜き像)は、多発性骨髄腫に特徴的な現象です。

痛みの特徴

骨の痛みに関しても通常の骨粗鬆症との違いがあまりないのですが、しいて言えば、多発性骨髄腫では“痛みが長く(1ヵ月以上)続く”、“体のあちこちが痛い”という特徴があるようです。また、安静時痛がある(動かなくても痛みがある)場合は腫瘍があったり、炎症が起きている可能性がありますので、多発性骨髄腫ではないかと疑う必要があります。

血液・尿検査

このように、“高齢である”、“痛みが長く続く”、“レントゲン写真では骨透亮像が見られるが、通常の骨粗鬆症のように一様に薄くなっているわけではない”、“数ヵ所に骨折がみられる”といった特徴のほか、貧血の症状があれば多発性骨髄腫を疑う必要があると思います。このような患者さんに対し、当整形外科では、少なくとも以下のような検査を行っています。

検査の種類 目的 検査項目 検査値の変動
(多発性骨髄腫の
場合)
血液検査 骨病変があるかどうかを調べる カルシウム 上昇
リン 上昇
アルカリホスファターゼ(ALP) 上昇
多発性骨髄腫に特徴的な項目を調べる 総蛋白 上昇
アルブミン 低下
ヘモグロビン 低下
尿検査 ベンス・ジョーンズ蛋白(BJP)型の多発性骨髄腫の可能性を調べる BJP 陽性

通常の骨粗鬆症の場合、一般にカルシウム、リン、ALPは正常値を示すことが多いため、血液検査を行えば、ある程度、通常の骨粗鬆症と多発性骨髄腫との見分けがつきます。そのほか、当整形外科では赤沈(赤血球沈降速度;ESR)とC反応性蛋白(CRP)も測定するようにしています。これらは、どちらも体の中に炎症があると高くなります。

骨生検(こつせいけん)

さらに整形外科では、骨病変が多発性骨髄腫などの血液のがんによるものなのか、あるいは乳がんや肺がんなどが骨に転移したものなのかを調べるため、骨生検を行うことがあります。これは、骨折した部位や骨が薄くなっている部位から骨の組織を採って、骨を直接調べる検査です。

病院によって、どの検査を行うかは多少違いますが、当整形外科では通常、以上のような検査を行い、異常がみられた患者さんには、血液内科でより詳しい検査を受けていただいています。

コラム
『見る目がないと、在るものも見えない』

整形外科を受診された患者さんの中から多発性骨髄腫を発見するには、医師の『見る目』が必要です。“見る目がないと、在るものも見えない”ということを実感した2人の患者さんの例をご紹介します。

1人目は54歳の女性の患者さんです。特に原因もなく突然腰痛が起こり、脊椎の圧迫骨折(骨が潰れること)と診断され、治療を行っていたのですが改善せず、当病院を受診されました。54歳という比較的若い年齢であるにもかかわらず、原因もなく骨折が起こり、通常の治療期間では改善しなかったことなどから、何か原因があるに違いないと考え、血液検査を行ったところ、多発性骨髄腫であることがわかりました。このように、慢性的・長期的に痛みなどの症状がみられる患者さんに対しては、血液検査を行うべきであることを確信しました。

2人目は72歳の女性の患者さんです。ヘルニアの手術を行った後、年1回、定期的に整形外科を受診され、また糖尿病で内科にも通院されていたのですが、症状(坐骨部の痛み)が出て初めて多発性骨髄腫にかかっていることがわかりました。過去数年間のレントゲン写真を比較してみると、徐々に骨が変形してきている様子が観察されました。また、内科の採血でも、経年的に貧血が出現し、総タンパクが増加しているという結果でした。症状がなかったとはいえ、これまでの検査結果と比較することがいかに重要であるかを痛感しました。