治療の進歩と今後の展望

これまでの治療の進歩

Q1.
多発性骨髄腫の治療では、これまでどのような進歩がありましたか?
A1.
自家造血幹細胞移植(じかぞうけつかんさいぼういしょく)と新しいお薬の登場で、治療成績が劇的に向上しました

治療の進歩

多発性骨髄腫の治療で化学療法(抗がん剤を使った治療法)がはじめて行われたのは、1958年です。1969年には2種類のお薬を組み合わせた治療法が始まりました。抗がん剤は、大量に投与すると、骨髄腫細胞をたくさん死滅させることができますが、その一方で、患者さんの骨髄(血液をつくる工場)の機能も破壊されてしまいます。そこで登場したのが自家造血幹細胞移植(じかぞうけつかんさいぼういしょく)(略して自家移植(じかいしょく))という治療法です。1980年代後半から始まり、盛んに行われるようになりました。これは、大量の抗がん剤を投与する前に、あらかじめ患者さんご自身の造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)(血液のもとになる細胞)を採って、保存しておき、大量の抗がん剤を投与した後に体の中に戻すという方法です。しばらくすると、体の中に戻した造血幹細胞が働き始め、破壊された骨髄の機能が回復してきます(「どんな治療法があるの?」Q4参照)。造血幹細胞は当初、骨髄から採っていましたが、現在ではほとんど末梢血(まっしょうけつ)(血管の中を流れている血液)から採るようになりました。そのほうが、移植後に骨髄の機能が早く回復するからです。自家移植は主に65歳以下の患者さんに行いますので、自家移植の登場によって、65歳以下の患者さんの治療成績は格段に向上しました。

その後、1999年から2010年にかけて、それまでの抗がん剤とは働きが異なる新しいお薬が次々と登場し、多発性骨髄腫の患者さんの治療成績は急速に向上しました。特に、自家移植が行えない65歳以上の患者さんでも、新しいお薬を使うことによって治療成績が向上してきました。このように、多発性骨髄腫の患者さんの治療成績が向上したのは、自家移植と新しいお薬によるところが大きいと思います。

また以前は、病気が再発した患者さんでは治療成績が非常に悪かったのですが、新しいお薬の登場で、再発した患者さんの治療成績も向上してきました。現在では、再発してもまた別の新しいお薬を使うことができますので、再発したからと言って落胆する必要はなくなりました。

現在も、新しいお薬を使ったいろいろな治療法が検討され、また、さらに新しいお薬の開発も進められていますので、治療成績は今後も向上していくことが期待されます。

新しい治療目標

治療の進歩に伴って、治療目標(何を目標として治療を行うか)も変化してきました。まだ効果的なお薬が少なかった時代の治療目標は緩和(かんわ)(体の苦痛などを和らげること)でしたが、その後、生存期間の延長が目標となり、最近ではより深い寛解(かんかい)(骨髄腫細胞をできるだけ減らすこと)を目指すようになりました。一般的に、より深い寛解を達成すれば、その後の経過も良好である(たとえば、再発するまでの期間が延びるなど)と言われています。そして将来的には、治癒(ちゆ)を視野に入れた治療も夢ではないと思います。