多発性骨髄腫の主な合併症と治療(後編)

合併症が起こるしくみ(2)

Q2.
多発性骨髄腫では、なぜ高カルシウム血症が起こるのでしょうか?
A2.
骨が溶けてカルシウムが血液中に出てくるのが主な原因です

多発性骨髄腫の合併症として、高カルシウム血症(血液中にカルシウムが増える)にも注意する必要があります(図2)

図2 多発性骨髄腫では、いろいろな症状が起こります(高カルシウム血症)

骨髄腫細胞は、骨の中にある骨髄という場所で増えていきます。骨の中には、破骨細胞(はこつさいぼう)という骨を溶かす細胞と、骨芽細胞(こつがさいぼう)という骨をつくる細胞がいて、うまくバランスがとられています(「骨を守るために」Q2参照)。骨髄腫細胞は、自分が生きやすい環境をつくるという性質をもっていますが、それに力を貸しているのが破骨細胞です。骨髄腫細胞は自分が長生きするために、いわば破骨細胞をだまして頑張らせてしまいます。破骨細胞が頑張った結果として、骨が溶け、骨の中にあったカルシウムが血液中に流れ込んで、高カルシウム血症になってしまうのです。

また、通常は余分なカルシウムは尿として排出されますが、多発性骨髄腫の患者さんで、腎臓の機能が低下しているとカルシウムが排出できなくなります。したがって、骨から溶け出したカルシウムが血液中に増えるのと同時に、カルシウムが排出されにくくなりますので、カルシウムが腎臓にたまり、腎臓の機能がさらに悪くなるという悪循環が起こります。骨病変があるからといって、必ず高カルシウム血症になるわけではありませんが、高カルシウム血症がみられる患者さんでは、なんらかの骨病変があるか、もしくは腎機能が低下している場合が多いようです。

高カルシウム血症の主な症状は食欲不振、吐き気、意識障害(ボーッとする)で、そのほか、倦怠感(けんたいかん)(だるい)、眠気、口が渇く、便秘などがみられる場合もあります。ただ、カルシウムの濃度がかなり高くならないと、このような症状は出ないようです。一方、カルシウムの濃度が高くても症状が出ない患者さんもいらっしゃいますので、どの程度の濃度でどのような症状が出るのかは一概には言えません。ご家族が患者さんの様子をみて、“食欲がないようだ”、“元気がない”、“ちょっと様子がおかしい”、“いつもと違う”、“ごはんも食べずにボーッとしている”と感じて、血液検査をすると、高カルシウム血症だったというケースがあります。高カルシウム血症をそのままにしておくと、意識障害がひどくなり、“呼びかけても答えない”、“疎通がとれない”、“会話ができない”といった症状がみられるようになります。