多発性骨髄腫の主な合併症と治療(後編)

合併症が起こるしくみ(1)

Q1.
多発性骨髄腫では、なぜ感染症にかかりやすい(易(い)感染性)のでしょうか?
A1.
体の抵抗力が弱くなるのが主な原因です

多発性骨髄腫の合併症の1つとして、感染症にかかりやすくなりますので(易感染性)、注意する必要があります(図1)

図1 多発性骨髄腫では、いろいろな症状が起こります(易感染性)

私たちの体は、白血球によって、異物(細菌、ウイルス、カビなど)の侵入から守られています(「感染症にかからないために」Q1参照)。異物を攻撃するには、白血球の数と“抗体”(免疫グロブリン)という蛋白質が重要となります。抗体は、白血球の中のリンパ球に含まれているB細胞からつくられますが、B細胞は抗体をつくる時に“形質細胞”という細胞に形を変えます。多発性骨髄腫では、この形質細胞に異常が起こりますので正常な抗体がつくれず、その代わりに、異物を攻撃する力をもたない“M蛋白”という抗体がつくられるようになります。正常な抗体がつくられないと体の抵抗力が弱くなり、感染症にかかりやすくなるため、日常生活では注意が必要です。たとえば、風邪やインフルエンザが流行っている時季や人混みに行くような時にはマスクを着用し、帰宅したら手洗い、うがいを心がけるとよいでしょう。

一方、白血球の数は、多発性骨髄腫になったからといって減ることはありませんが、お薬によって白血球の数が減ってしまう場合がありますので、感染症には注意が必要です。前述のように、多発性骨髄腫はリンパ球の中の形質細胞に異常が起こる病気ですので、たとえばこれを減らすようなお薬を使うと、正常なリンパ球も壊されてしまい、ウイルスに感染しやすくなります。しかし、多発性骨髄腫の治療が効いて病気がよくなってくれば、失われた免疫力は回復してきます。感染症への注意が必要なのは、お薬による治療が始まって間もない患者さん、すなわち病気はまだよくなっていないのに、お薬によって免疫力が低下しているような患者さんです。一方、治療がまだ始まっていない患者さん、あるいは治療は始まっていても病気が落ち着いた状態にある患者さんでは、過度に気をつける必要がない場合もあります。どのくらい注意すればよいのかは患者さんによって違いますので、主治医の先生に聞いてみましょう。

感染症でよくみられる症状は咳、のどの痛みなどの風邪の症状で、比較的多くの患者さんが風邪をひきやすい傾向にあります。一般に、重症になることはあまりないようですが、高齢の患者さんでは、肺炎やインフルエンザにかかると悪化しやすいため、注意しましょう。そのほか、ヘルペスウイルス感染や帯状疱疹(たいじょうほうしん)を発症しやすくなりますので皮膚に発疹などの異常が見られたときは、主治医の先生に相談してください。