多発性骨髄腫の主な合併症と治療(前編)

貧血に対する治療

Q2.
貧血を治療する方法について教えてください
A2.
輸血やエリスロポエチン製剤の投与を行いますが、多発性骨髄腫そのものがよくなれば貧血も改善されます

多発性骨髄腫では、ヘモグロビンの値が多発性骨髄腫そのものの治療を開始する基準になります。すなわち、息切れなどの症状がみられなくても、ヘモグロビンの値が10g/dL以下に下がった、あるいは正常な値より2g/dL以上下がった場合には多発性骨髄腫の治療を開始する必要があります。治療によって多発性骨髄腫そのものがよくなってくると、一般に、貧血も改善されてきます。しかし、なかには重い貧血で、赤血球の輸血が必要な患者さんもいらっしゃいます(注:がん研有明病院では、ヘモグロビンの値が6g/dL以下くらいまで低下した患者さんを対象としています)。輸血は、だいたい2単位(280mL)を2時間くらいかけて、ゆっくりと行います。急速に行うと心臓に負担がかかりますので、心不全の患者さんやご高齢の患者さんではもっとゆっくりと行う必要があります。多発性骨髄腫では、病気そのものがよくなると、貧血もよくなっていく場合が多いため、輸血が何度も必要となる患者さんは多くありません。輸血を繰り返すと、体内の鉄分が過剰になり、臓器に障害を起こす場合や、未知のウイルスの感染リスクなどがありますので、輸血の回数は極力抑える必要があります。多発性骨髄腫の患者さんでは、初期の段階や、抗がん剤の影響で貧血が起こった場合など、一時的に輸血を行うケースがほとんどです。

一方、腎機能が低下することによって貧血になった患者さんには、お薬(エリスロポエチン製剤)を使って、貧血の治療を行う場合があります。腎臓では、エリスロポエチンという赤血球を増やす物質がつくられていますが、腎臓の機能が悪くなると、エリスロポエチンがつくられなくなります。そうなると赤血球が減って、貧血になります。このような患者さんには、エリスロポエチン製剤を注射し、赤血球を増やす手助けをすることもあります。ただし、海外では、抗がん剤とエリスロポエチン製剤をいっしょに用いると、血栓症(けっせんしょう)(血のかたまりができる)になる恐れがあると報告されています。多発性骨髄腫の患者さんは、もともと血栓症になりやすいため、投与するかどうかは慎重に判断する必要があります。