多発性骨髄腫の主な合併症と治療(前編)

合併症が起こるしくみ

Q1.
多発性骨髄腫では、なぜ貧血、骨病変、腎機能の低下が起こるのでしょうか?
A1.
正常な血液がつくれなくなる(貧血)、骨が溶ける(骨病変)、腎臓に悪い蛋白質がたまる(腎機能の低下)のが主な原因です

多発性骨髄腫に伴って起こる合併症のうち、代表的なものは貧血、骨病変(骨が弱くなる、骨折、骨の痛みといった骨の病気)、腎機能の低下です(図)

図 多発性骨髄腫では、いろいろな症状が起こります

貧血

多発性骨髄腫では、血液をつくる工場(骨の真ん中にある骨髄(こつずい)と呼ばれる場所)に病気のもとがありますので、主にその影響で貧血が起こります。また、病気とは別の理由、たとえば“鉄が不足している”、“ビタミンが不足している”といった理由で貧血が起きている場合もありますので、これらは多発性骨髄腫の治療を始める前にきちんと治療しておくことが大切です。

貧血かどうかは、ヘモグロビン(赤血球に含まれる蛋白質で、貧血があると減少します)の値で調べますが、初診の患者さんの8割くらいに軽い貧血がみられます。ただし、実際に症状が出てくるのは、ヘモグロビンの値が8.5g/dLを下回るほどの重い貧血の場合で、日本では多発性骨髄腫の患者さんの約3割が重い貧血と診断されているようです。

最初に起こる主な症状は、“労作時(ろうさじ)息切れ”という症状です。これは、“ちょっとした運動をしたときに息切れがする”、“階段を1段上がるにも息切れがしてきつい”、“坂道が上りにくくなる”、といった症状です。これが進むと、普通に歩いていてもふらつく、息があがるなどの症状が出てくるようになります。

骨病変

また多発性骨髄腫では、骨病変が起こりやすく、痛みや骨折を伴います。多発性骨髄腫は、前述のように、骨の真ん中にある骨髄が病気になっていきますので、腫瘍(骨髄腫細胞)が周りにある骨を溶かしたり、弱くしたりして、骨の病気を引き起こします。

初診時に、約7〜8割の多発性骨髄腫の患者さんで骨になんらかの病変がみられますが、もっとも多い症状は腰の痛みです。腰の痛みは、主に背骨の圧迫骨折(背骨がつぶれること)が原因です。背骨は重量がかかっていますし、もともと骨粗鬆症などを起こしやすい場所ですので、骨が弱くなっている多発性骨髄腫の患者さんでは、症状がいちばんあらわれやすいのだと考えられます。

腎機能の低下

腎臓は、血液の中から悪いものをろ過する(こし出す)フィルターのような役割をもっています。ところが多発性骨髄腫では、血液の中に悪い蛋白質(M蛋白の軽鎖(けいさ))がたくさんつくられますので、それが腎臓のフィルターに引っかかって、フィルターそのものを傷つけてしまい、腎機能が低下するのです。そのほかにも高カルシウム血症や、骨髄腫細胞の腎臓への浸潤などの要因もあります。

多発性骨髄腫では、診断時に約15〜40%の患者さんに腎機能の低下がみられるとされています(木崎昌弘編集『多発性骨髄腫治療マニュアル』、南江堂より)。腎機能が低下しても、進行するまで自覚症状はあまりありません。通常は症状が出る前に、血液検査で腎機能が悪いことに気づく場合が多いようです。腎機能がかなり悪くなると、“むくみが出る”、“胸に水がたまって息切れがする”、“貧血になる”(Q2参照)などの症状がみられるようになります。

腎機能が低下しているかどうかは、血液検査でクレアチニンの値を調べるとわかります。クレアチニンは血液中に存在する老廃物(ろうはいぶつ)(体中から回収されてきた不要なもの)で、通常は腎臓を通って尿から排出されます。しかし、腎機能が悪いと、尿から排出できずに、血液中にたまっていきますので、クレアチニンの値が上がります。クレアチニンの値が5mg/dLくらいまで上がると、なんらかの症状が出てくるようになります。ただ、クレアチニンは男性で筋肉質だと高く、やせ型の女性だと低く出るなどの傾向もありますので、“クレアチニンの値がどこまで高くなったら症状が出るのか”は、一概には言えません。