多発性骨髄腫と似ている病気

全身性ALアミロイドーシスとは

Q2.
全身性ALアミロイドーシスとはどのような病気ですか?
A2.
アミロイドという蛋白質が変性して臓器に沈着し、様々な臓器障害が起こる病気です

病気の特徴

アミロイドーシスとは、アミロイドという水に溶けない蛋白質が変性して臓器に沈着(ちんちゃく)する病気です。アミロイドーシスのなかでも、沈着している蛋白質が免疫グロブリン(抗体)の軽鎖(けいさ;図左)である場合を全身性ALアミロイドーシスと呼んでいます。全身性ALアミロイドーシスは、多発性骨髄腫に合併して起こる続発性ALアミロイドーシスと、多発性骨髄腫の前がん状態であるMGUS(エムガス;基礎編「いろいろなタイプの多発性骨髄腫」参照)が原因で起こる原発性ALアミロイドーシスに分けられます。どちらも腫瘍化した形質細胞から作られるM蛋白(役に立たない抗体)の軽鎖が全身の臓器に沈着し、様々な臓器障害が引き起こされます。

図 抗体の構造

障害を受けやすい代表的な臓器は心臓と腎臓です。特に心臓に沈着した場合が最も深刻で、沈着すると、心臓の壁が厚くなり、心筋が肥厚するため、心臓の働きが悪くなって重度の心不全や不整脈が起こります。アミロイドーシスを放置していると、1年から1年半以内に心室性の不整脈などで突然死を来します1)。また、腎臓への沈着も深刻です。腎臓に沈着するとネフローゼ症候群を引き起こします。これは蛋白尿が大量に出てくる病気で、尿蛋白として血中のアルブミンも失われてしまいます。1日10g近くの尿蛋白が出る患者さんでは低アルブミン血症となり、全身の浮腫(むくみ)、さらにひどくなれば胸水や腹水がたまる場合もあります。最終的には腎不全になり、透析が必要になります。

そのほか、自律神経(自分が意識していなくても動いている神経)の障害も比較的多くみられます。代表的な症状は起立性の低血圧です。普段、立ち上がったときに頭から血が引き、立ちくらみが起こることがありますが、意識を失わないのは、自律神経の働きによって、知らず知らずのうちに足の血管がぎゅっと締まって血液を上に押し上げているためです。一方、自律神経に障害が起こると、下がった血液が上に上がらないために失神を起こします。ほかにも、アミロイドが舌に沈着して巨舌(きょぜつ;舌が口の中に収まらなくなるほど肥大すること)という症状が起こることもあります。どの臓器に障害が起こるのかは患者さんによって違いますが、ほとんどの患者さんは複数の臓器にアミロイドの沈着がみられます。

全身性ALアミロイドーシスは高齢者に多く、若い人でも40歳代の後半で、80歳以上の患者さんもいらっしゃいます。

診断

一般に、心不全や不整脈があると循環器内科、ネフローゼ症候群があると腎臓内科をまず受診し、原因となる病気を特定するためにいろいろな検査を行います。アミロイドーシスが疑われる場合には、組織検査を行ってアミロイドが沈着しているかどうかを調べます。組織検査では、障害が起こっている臓器の一部を採取し(生検と言います)、それを顕微鏡で観察します。その際、アミロイドが赤く染まるような染色(Congo Red染色)を行いますので、もし顕微鏡で均一に赤く染まっている構造物がみられれば、アミロイドと判定します。

組織検査でアミロイドが認められると、血液検査を行ってM蛋白やフリーライトチェーンを測定します(図右)。その結果、M蛋白の上昇、あるいはフリーライトチェーンのκ鎖、λ鎖どちらかに上昇が認められれば、形質細胞の腫瘍があると判断できますので、骨髄穿刺(こつずいせんし;骨に針を刺し、その骨の内部にある骨髄液を採取する方法)を行い、骨髄中に形質細胞があるかどうかを調べ、もしその存在が確認できたら、治療を開始します。一般に、原発性ALアミロイドーシス(MGUSから起こる)と続発性ALアミロイドーシス(多発性骨髄腫を合併する)では、M蛋白やフリーライトチェーンの値が異なります。MGUSの場合は、もともとM蛋白の量が少なく、MGUSであることに気づいていないケースもあり、仮にアミロイドーシスを合併していたとしても、気づかないうちに進行することがあります。一方、多発性骨髄腫を合併している場合は、M蛋白が非常に高値を示し、治療経過も不良です。

治療

全身性ALアミロイドーシスでは、一般に化学療法や自家末梢血幹細胞移植による治療を行います。治療が効いて、腫瘍化した形質細胞が減少し、アミロイドのもとになるM蛋白の軽鎖が供給されなくなれば、アミロイドは徐々に溶けてなくなることが、最近わかってきました。ただし、アミロイドが消えるまでには数年かかると言われています。したがって、アミロイドがこれ以上増えないように、またフリーライトチェーンが正常な状態を保てるように、しっかり治療を行うことが大切です。

自家末梢血幹細胞移植は、大量の抗がん剤を投与して腫瘍細胞を死滅させた後に、あらかじめ採取しておいた自分の造血幹細胞(血液のもとになる細胞)を体内に戻すという治療法です。(基礎編「自家造血幹細胞移植ってどんな治療?」参照)。移植を行うとほぼ治癒(ちゆ;病気が治ること)に近い状態まで望めます。しかし、高齢者や、全身性ALアミロイドーシスの患者さんでは全身の状態が悪くなっていることが多く、移植が行えないケースも少なくありません。化学療法も、高齢者や心不全のみられる患者さんでは副作用の危険性があり、実施できない場合もあります。しかし最近、副作用を抑えた新しいお薬がいくつか出てきました。これらの新しいお薬も含めて、主治医の先生は、患者さんの年齢や全身の状態、合併症などを考慮しながら、最適な治療を考えてくれますので、治療を止めずに継続することが大切です。治療をしっかり受けることで、これまで恐ろしい病気と思われていた全身性ALアミロイドーシスが“希望のもてる病気”と考えられるようになってきました。今後も治療法は進歩していくと思いますので、全身性ALアミロイドーシスの患者さんの予後(病気の状態)も改善されることが期待されます。

また、全身性ALアミロイドーシスの特徴として、治療を行って寛解(かんかい;治療により、がんなどの症状が軽減・消失したり、がん細胞が減少・消失する効果が得られること)に達すると、その後、治療を行わなくても5~10年、問題なく過ごせる患者さんが約半分ほどいらっしゃいます。ただし、このような患者さんでも定期的に受診して検査を受ける必要があります。もし定期検査でフリーライトチェーンの上昇がみられたら、すぐに治療を再開します。当院では、前回と同じ治療を行うこともあれば、別の治療法を開始することもありますが、いずれにせよ、半分以上の患者さんでは再度寛解が得られ、治療不要となる可能性がありますので、希望をもつことが大切です。

日常生活で注意すること

全身性ALアミロイドーシスの治療では、できるだけ早くフリーライトチェーンの値を下げるために、“予定どおりに治療を行う”ことが大切です。治療の最中に風邪をひいたり感染症にかかったりすると、治療を中断せざるを得なくなります。たとえば風邪をひいて治療を2週間中断すると、せっかく下がっていたフリーライトチェーンが再び上昇してしまうことがあります。そのため、治療を受けているときは、“極力、人混みに行かない”、“家族が風邪をひいたら近づかない”など、感染症に注意して、治療を中断しないように心がけましょう。


<引用文献>

1) Hassan W, et al., Tex Heart Inst J, 2005; 32: 178–184